経済評論家の父から息子への手紙 / 山崎 元(2024)

・経済評論家の山崎 元(やまざき はじめ)さんの最後の書籍です。大学に合格した息子さんへの手紙形式になっています。山崎さんは、ご自分の人生を振り返りながら、「お金の心配をせず自由に生きる方法」を指南してくれます。

経済評論家の父から息子への手紙 / 山崎 元(2024

・働き方・稼ぎ方

昭和生まれの働き方は「安定した職を得て、出世して、労働を高くかつ長く売る」であった。サラリーマンの場合は、できるだけ大手の安定した会社に入り、失敗を避けながら人事評価上の競争を勝ち抜いて、なるべく偉くなること、が目指すべき職業人生であった。

「新しい働き方」は、労働時間の切り売りではない効率性を求めて欲しい。目指すべきは、(1)なるべく若い時点で財産を作る、(2)働き方の自由を獲得する、職業人生である。この二つを実現するためのマインドセットは、(1)株式性の報酬とうまく関わる、(2)適度なリスクを取る、(3)他人と同じにならないように工夫する、である。「自分に投資をすることは同じだが、失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」のが新しい時代の稼ぎ方である。

株式で稼ぐ働き方は、(1)自分で起業する、(2)早い段階で起業に参加する、(3)報酬の一部を自社株ないし自社株のストックオプションで支払う企業で働く、(4)企業の初期段階で出資させてもらう、という選択肢が有効である。

・資本主義経済のしくみとお金の増やし方

資本主義経済は、リスクを取ってもいい人間が、リスクを取りたくない人間から、利益を吸い上げるようにできている。利益を吸い上げる時に介在するのが資本であり、資本に参加する手段が株式である。

労働で稼いだお金の増やし方は、以下の通り。

(1)生活費の3~6か月分を銀行の普通預金に預ける。残りは運用資金とする。

(2)運用資金は、優良なインデックスファンド(全世界株式インデックスファンド)に投資する。

(3)運用資金に回せるお金が増えたら追加投資する。お金が必要な事態が生じたら、必要な分だけ解約してお金を使う。

インデックスファンドに投資した場合、100年に2,3度程度の「最悪ケース」では1年で1/3程度の損失、同程度の「最良ケース」で、40%程度の利益、平均すると年率5~6%の利益と思われる。資産運用の3原則は、「長期運用」「分散投資」「低コスト」を守れば良い。長期投資では、自分に適切なリスクの大きさだけ投資して、じっとしているのが良い。

経済の主体は、生産と消費である。そして、生産は、資本と労働によって行われる。資本は、商品を生産する工場、設備、原材料、など会社の財産を指す。資本は、調達方法から、借入金である他人資本と、株式を通じて所有権のある自己資本に分けられる。

ある労働者Aが、一日2万円の価値を生産して、1万円の賃金をもらった場合、費用を除いた利益は、資本家に還元される。利益の全てをもらえない労働者は、安定した雇用と安定した賃金と引き換えに、生み出した利益の一部を横取りされている。資本家はリスクを負って投資をしているので当然の権利と言える。

大多数の労働者Aは、他人と取り換え可能な労働者であり立場が弱い。少数派の労働者Bは、経営ノウハウ、高度な技術など、ブラックボックスを獲得し、高額な報酬を得ることになる。労働者Aは、他人と取り換え可能な人材であり、雇用不安や賃金減少のリスクを嫌う傾向がある。今後は、労働者Bを目指して欲しい。

・もう少し伝えたいこと

自分の人材価値を育て、守り、活かす、事を実行して欲しい。

人材価値 =(能力+実績)× 持ち時間

人材価値向上のため、自己投資の意義と重要性は変わらない。投資する資源は、(1)時間、(2)努力、(3)お金、この3つだ。投資で得ようとする対象は、(1)知識、(2)スキル、(3)経験、(4)人間関係、(5)時間、である。

職業選択は、興味を持って面白いと思える仕事、自分の倫理観に反しない仕事、を選んで欲しい。学問でも仕事でも、2年間集中的に取り組むと、素人とは違うレベルに到達できる。2年間努力して、芽が出なければ、転職を考えても良い。

人間関係は重要な資産だ。自分を変える方法は、付き合う人を変えるか、時間の使い方を変えるかの2通りだ。付き合うと好影響をもたらす、「頭のいい奴」、センスが良くてチャンスを引っ張ってくる「面白い奴」、真に心を許せる「本当にいい奴」と積極的に付き合おう。そのためには、自分が3種類のどれかの人間になる必要がある。人間関係の基本は、時間厳守とさわやかな挨拶だ。

・ささやかな幸福論

人の幸福感は、「自分が承認されているという感覚」(自己承認感)と考える。「豊かさ・お金」は、少々あればよい。「健康」は別格のため除外する。幸福感は、その時々に感じるものだ。日常の一日一日を大切にして欲しい。モテる男は幸福に見える。モテる秘訣は、心からの興味を示して、相手の話を聞くことだ。自分から行う自分語りは必ず自慢やアピールが出るのでやめておけ。

伝えたいことは、モテる男になれ、友達を大切にせよ、上機嫌で暮らせ、この3つである。

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