サピエンス全史(上・下)/ ユヴァル・ノア・ハラリ(2016)

 7万年前、私たちホモ・サピエンスは、アフリカの片隅で、生きていくのが精いっぱいの、取るに足らない動物でした。その後、食物連鎖の頂点に登りつめ、創造と破壊の神聖な能力さえ手に入れようとしています。この歴史を学び、これから選ぶべき道に思いを巡らしましょう。

サピエンス全史(上・下) / ユヴァル・ノア・ハラリ(2016 + サピエンス全史の読み方 / 山形 浩生(2024)

・認知革命 

 30万年前、人類は火を日常的に使用し始めた。10万年前、地球には、ネアンデルタール、エレクトス、サピエンスなど6つの人類種がいたが取るに足らない動物だった。7万年前、アフリカ大陸の片隅で暮らしていたサピエンスは突然変異で、新しい言語能力を手に入れた。想像力で作り上げたフィクション(虚構)を信じることができる「認知革命」である。サピエンスは、言語を用いて、事実だけではなく、見たこともないフィクションを、共有して、信じることができた。例えば、「善行をすれば天国に行ける」というフィクションを広めると何十億人が善行で協力できるのだ。

 フィクション(想像上の現実)は、神話や宗教だけじゃなく、国家や憲法、法律、習慣など、多岐にわたる。フィクションを信じて行動することで、フィクションは「現実」となり、大勢の見知らぬ人どうしが協力できる。これはサピエンスだけが手にした特殊能力であり、地球の支配者になった要因である。

・農業革命

 約1万年前、サピエンスは、小麦や野菜の栽培とヤギやヒツジの家畜化という村落生活を始めた。これが「農業革命」である。農作物で安定的な食糧調達ができるため飢えや病気から解放された。一方で、富の蓄積により、新たな階級が生じて、王や貴族が登場、貧富の差が拡大して、一部の権力者が国を支配した。

 権力者の最大の目的は、「想像上の秩序」をより多くの人に信じ込ませ社会を安定化することだった。王や貴族は「この支配構造は神が作ったルールである」と宣言した。一方、アメリカの権力者は、独立宣言で「神のみ名において万人は平等である」と宣言した。2つの事例は、異なるアプローチだが、超人間的な神の威厳を利用して、想像上の秩序を保つことができた。

 過去の権力者は「想像上の秩序」を作り出したが、その拡大には限界があった。シュメール人が書記という記号を使った情報保存と伝達方法を発明したことで、「想像上の秩序」の適用範囲は拡大され、人々は国家レベルで情報を共有し、協力できるようになった。

・グローバル化

 2つの革命の後、世界のグローバル化を促進したのが、貨幣、帝国主義、宗教であった。「貨幣」は、貨幣自体の価値ではなく、貨幣への信頼を多くの人々が共有できたことが大きい。貨幣を信じることで、国籍や宗教を超えて見知らぬ人どうしが協力できた。

 「帝国主義」は、世界を統一へと向かわせた。BC2250年、アッカド帝国が誕生、その後、ローマ帝国も、大英帝国も自己利益のため、領土を拡大し、自国の文化を他国に広げた。現在は、軍隊ではなく、グローバル企業や国際機関などがグローバル化を推進している。

 「宗教」は、超人間的な神の教えとされ、絶対的、普遍的に、世界に安定をもたらしている。資本主義や共産主義も正しさの根源を超人間的な真理としており、宗教の一種と言えるだろう。

・科学革命

 認知革命、農業革命に続く、第3の革命は、約500年前に始まった「科学革命」である。過去500年で、地球の人口は5億人から70億人へ14倍となった。経済的豊かさの指標であるGDPは、2500億ドルから60兆ドルと240倍になった。

 500年前に現れたヨーロッパの新帝国主義は、領土拡大とともに無知を土台に「新しい知識を探求したい」欲望が加わった。科学者を同行させ未知の大陸を発見・征服した。

 科学革命は、生産性の向上と経済成長をもたらした。経済成長は信用創造というフィクションを作り出して資本主義を支え、資本主義は資金供給で科学革命を支えた。ただし、格差の拡大や信用バブル崩壊のリスクは高まっている。

・あとがき

 サピエンスは、「認知革命」により、想像上の現実を共有して、見知らぬ人国家レベルでと協力することができるようになり、地球の支配者になった。

 そして、「農業革命」により食料の増産に成功したが、富の蓄積により格差は拡大した。

 「貨幣」「帝国主義」「宗教」の存在によりグローバル化が加速している。

 そして、「科学革命」により、驚異的な人口の増加と経済成長を成し遂げた。

ただし、文明の発展が個人の不安や苦しみを解消したとは思えない。私たちは、「何を望みたいか?」改めて、考える必要があるだろう。

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