休養学 / 片野 秀樹(2024)
健康づくりの三大要素は、「栄養・運動・休養」です。本書は、休養という行為を7種類に分類して、最適な組み合わせを見つけることを提案しています。
休養学 / 片野 秀樹(2024)
- 日本人の8割が疲れている
調査結果では、日本人の8割の方が疲労感を訴えています。特に、20代、30代という若者が疲れています。OECD加盟国の平均労働時間は1752時間、日本は1607時間で多くはありませんが、ドイツの1341時間と比べると働きすぎかもしれません。OECD加盟国の平均睡眠時間は、8時間28分、日本は7時間22分で最下位、改善が必要かもしれません。
- 疲労の正体
疲労は、「過度の肉体的、精神的活動により、身体の活動能力が低下した状態」です。私たちが呼吸で体内に取り込んだ酸素の化学反応で生じる「活性酸素」は細胞を傷つけます。疲労は、活性酸素により細胞の機能が低下した状態ともいえます。細胞を修復するATPは、5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、+ビタミン、ミネラル)から作られます。だからバランスの取れた食事は大切ですね。
人間の体は、神経系、内分泌系、免疫系、3つの制御システムがあり、ホメオスタシス(恒常性)を保ちます。疲労には、急性疲労、亜急性疲労、慢性疲労の3段階があります。
疲労感は、「体がつかれているから、休みなさい。」というアラートです。体のアラートは、3つ(痛み、発熱、疲労)ありますが、疲労感は、責任感や使命感でマスキングできます。疲労感を一時的にマスキングする能力は、人間が身につけた素晴らしい能力ですが、過労につながります。コーヒーやエナジードリンクにもマスキング効果があります、疲労感を隠して頑張り続けると、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高まります。
肉体的、精神的な疲労の原因となる外部刺激をストレスといいます。①物理的(暑さ、寒さ、騒音など)②化学的(郊外、アルコール、タバコほか)③心理的(不安、緊張、怒り、悲しみほか)④生物学(最近、ウイルスほか)⑤社会的(家族/友人の人間関係、お金など経済的問題ほか)があります。そして、私たちはストレス耐性を高めることができます。
ストレスがかかると脳の視床下部が感知し、脳下垂体を通り「内分泌系」は副腎皮質からコルチゾールというホルモンを出します。疲労がさらに蓄積するとホルモン異常が生じ、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高尿酸血症(痛風)を発症します。
ストレスは、「自律神経系」にも影響します。自律神経は、交感神経(緊張・興奮すると優位になる)と副交感神経(リラックスすると優位になる)があります。人間は、サーカディアンリズム(概日リズム)を持っており、昼は交感神経、夜は副交感神経が優位になり体のバランスを整えています。この、交感神経と副交感神経がバランスよく活動することが大切です。ストレスや疲労は、「免疫系」にも影響を与えます。疲労がたまると風邪を引きやすくなり、発がんリスクも高まります。
- 最高の休養を取る7戦略
一般的な活動サイクルは、活動→疲労→休養 ですが、理想は、活動→疲労→休養→活力 となります。人間は、適正な負荷をかけると活力が高まります。適正な負荷は、自分で決めた負荷、仕事以外の負荷、自分を成長させる負荷、楽しむ余裕のある負荷、となります。休養(生理的、心理的、社会的)には、7つの休養モデルがあります。①休息(活動を停止、心と体をリラックス)②運動(軽い運動で老廃物を除去、リンパの流れを改善)③栄養(食べる量や回数を抑え、疲れた消化器系を休ませる)④親交(社会や人と交流したり、自然や動物と触れ合う)⑤娯楽(自分の趣味・嗜好を追求する)⑥造形・創造(何かに集中したり、好きなことに思いを巡らす)⑦転換(外部環境を変更させ気分をリセットする)
7つのモデルを組み合わせて自分に最適な「積極的な休養」を作り上げてください。
- 眠るだけでは休養にならない
休養には、睡眠が最も大切です。昼間の活動で壊れた細胞は、睡眠中に修復されます。睡眠不足は、肥満、生活習慣病、ウイルス感染の要因になります。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を、約90分サイクルで繰り返します。ノンレム睡眠時、脳の老廃物(アミロイドβ)を脳外に排出します。認知症予防には睡眠時間確保が重要です。ただし、寝過ぎにも注意が必要で、ベッドレスト1日当たり、筋肉が0.5~1.0%減少します。
睡眠不足の日は、パワーナップ(15~20分)が有効です。判断力、理解力、集中力が改善して作業効率が上がります。
- 新しい休み方
疲労したから休むのではなく、疲労を予測して休みましょう。予定するイベント行事から逆算して必要な活力を蓄えよう。仕事の合間の隙間時間を利用した、3~5分の休養も効果的です。
