反応しない練習 / 草薙 龍瞬(2015)
・ブッダの教え方(原始仏教)は、実用的で、合理的で、日々の生活で活用できます。心のムダな反応を止めることで、悩み・苦しいから解放されましょう。
反応しない練習 / 草薙 龍瞬(2015)
・反応する前に理解する
人間が持つ「求める心」が、「七つの欲求」を生み出し、その欲求に突き動かされ人は反応します。時には欲求を満たす喜びが、時には欲求が叶わない不満が生まれます。大切なことは、「心とは求め続けるもの、渇き続けるもの、それゆえ満たされないもの」、と理解することです。七つの欲求は、生存欲、睡眠欲、食欲、性欲、怠惰欲、歓楽欲、承認欲、と言われています。承認欲は、認めて欲しい、愛して欲しい、評価して欲しい、という欲求です。ここで、「私には承認欲があるのだ。だから渇いているのだ。」と正しく理解しましょう。悩みの理由を理解すると、悩みは解決できる課題に変わります。また、自分の心の状態を冷静に観察して言葉で確認する、体の感覚に意識を集中する、これで、心を静めて、深い落ち着きと集中を得ることができます。自分の心の状態を、貪欲、怒り、妄想の3つに分類して観察しましょう。心の状態を正しく把握することで、ムダな反応を解消できます。
・良し悪しを判断しない
多くの人が「判断する病気」に感染しています。人と別れた後、彼はいい人・悪い人、好きだ、嫌いだ、と評価します。自分は絶対に正しいと思い込む人、こうでなければと思い込む人、すべて「判断する病気」にかかっています。人が判断しすぎる理由は、「分かった気になる気持ち良さ」と、「自分は正しいと思い込む(承認欲を満たせる)快楽」があるためです。判断は、アタマの中にしか存在しない、妄想にすぎません。真実でもない有益でもない判断は不要です。ムダな判断から自由になるため、「あ、今、判断している」と意識しましょう。まわりの判断中毒者に合わせないで、「自分は自分」と線を引きましょう。「自分は正しい」という思い込みも誤りです。世界を正しく理解する「素直な自分」を目指しましょう。人生に、あやまちや失敗はつきものです。そこでも、自分を否定せず、今なすべきこと、今できることに取り組みましょう。
・マイナスの感情で「損しない」
感情は心の反応です。感情を上手にコントロールしましょう。勝利とは、相手に勝つことではありません。相手に反応して心を失わないことです。自分の心を前と後ろに分けてみましょう。前の心は、そのまま相手を見ることに使います。後ろ側の心は、自分の反応(心)を見ることに使いましょう。後ろ側の気づきの心で、反応しない心(不動心)が育ちます。
相手とのかかわり方の原理原則は、①相手を判断しない、②過去は忘れる、③相手を新しい人と考える、④理解し合うことを目的とする、⑤関わりのゴールを見る、となります。自分の承認欲に左右された「判断」はやめましょう。過去を引きずると過去の記憶に反応して新しい怒りを生まれます。人の心は常に変わります、次に会う時は、新しい人として向き合いましょう。人との関わりで大切なのは、理解し合うこと、お互いの幸せのために関わり合いましょう。快の反応(喜びや楽しさ)を増やして、不快の反応(怒りや怖れ)を減らしましょう。食べたいものをおいしく食べる、快適な睡眠をとる、家族と楽しく過ごす、趣味や娯楽を楽しむ、快の行動は積極的に行いましょう。
・他人の目から自由になる
他人の目が気になるのは、「承認欲」(認められたい)から生まれる、「どう見られているだろう」という妄想が要因です。妄想には際限がありません。妄想は確かめるすべはありません。妄想をやめて、方向性(自分の目標)を確認して、合理的な考え方・理解の仕方を学びましょう。特定の人間がストレス要因になる場合は、きっぱりと距離を置きましょう。
人が「比較する」のも承認欲から始まる妄想です。比較しても現実は変わらないけど、この妄想は、簡単にできて、たまに優越感を持てるのでやめられません。承認欲を見たしたいなら「正しい努力(改善・集中・納得)」を実行しましょう。①認められたい気持ちを動機として、今の仕事・生活を「改善」していく。②「自分のモノゴトに集中」する。③「自分で納得できる」ことを指針(基準)とする。自分のやるべきことを理解して、集中する。やり遂げた後は納得感が残る。これが正しい努力です。
・正しく競争する
生命は、欲を満たすことを求めています。生存に必要な食べ物や住まい、衣服というモノだけではありません。承認欲を満たす記号(地位やブランド、学歴、容姿、キャリアなど)も含まれます。これらの記号に限りがあるため奪い合う、競争が始まります。競争は、奪い合いで留まらず、もっともっとと、「貪欲」に支配されます。競争という心理の底には、「何かを手に入れれば欲を満たせる」という欲求と「手に入れたものだけでは満足できない」という貪欲(心の渇き)が存在するのです。競争と向き合うには、競争に参加して勝利を目指す、競争から降りて違う生き方を目指す、ではない第3の選択肢、勝ちか負けではない別の価値観を目指しましょう。ブッダは、人生で大切4つの心がけを説明しています。①慈(慈しみの心:相手の幸せを願う心)、②悲(悲の心:相手の苦しみ・悲しみを理解すること)、③喜(喜の心:相手の喜び・楽しさを理解すること)、④捨(捨の心:手放す心、反応しない心)この4つの心がけを人生の基本ルールにしていきましょう。人生を妨げる5つの妨げは、①快楽に流される心、②怒り、③やる気のない心、④落ち着かない心、⑤疑い、です。妨げに襲われたら、なるべく反応しないで、妨げが襲ってきていると理解しましょう。方向性(自分の目標)を思い出して、①反応に逃げない(反応を止める)、②快を見つける(仕事や作業を楽しむ)、を行いましょう。人生の方程式は、【正しい努力―五つの妨げ=人生】となります。
・考える基準を持つ
自分の心の中に、正しい生き方を持ちよりどころにしましょう。正しい生き方は、①反応せず正しく理解すること、②三毒(貪欲、怒り、妄想)を回避する(心をきれいに保つ)こと、③人々・生命の幸せを願う(慈・悲・喜・捨の心で向き合う)ことです。正しい方向性を見据え、正しい努力をする。人生で大切なのは、こうした道(生き方)を確立することです。道に立つことができれば迷いがなくなるでしょう。「この道を歩いていけばよい。必ず、納得にたどり着ける。」と人生を信頼できるようになるのです。